2015年8月13日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【44】

1. 【clay pigeon】カモ
例)She's their clay pigeon.(彼女は彼らのカモだ)

2. 【call the shots】支配する
例)The guy was calling the shots at the site. (現場では奴が指揮監督していた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は、クレー射撃で空中に投げ上げる、土でできた皿状の標的のこと。的(まと)であることから、「カモ」という意味に派生したのでしょうか。

 

英語の神様と称される故・長崎玄弥さんは、「翻訳家は演奏家だ。同じピアノ曲でも弾くピアニストによって風情が異なるように、翻訳においても、創造的なメンタリティーが大事」とおっしゃっています(長崎玄弥『長崎玄弥の英語の攻め方』1992年,アルク,p. 137)。3歳から15歳までピアノを習っていた僕にとっては、とても分かりやすい比喩だと思いました。同じ曲であっても演奏者が異なれば全く異なる調べになるのと同様、原文が同じ英語の文章であっても日本語にする翻訳者が異なれば訳文も全く異なる調子になります。

そして長崎さんが言う「創造的なメンタリティー」を身に着けるため、ボクはできるだけ多くの本を読んだり、芸術に触れる機会をつくっています。ピアノと同様、翻訳も日々精進です。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.213」を改稿)

2015年8月12日水曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【43】

1. 【on a light note】軽い調子で
例)The book closes on a light note.(その本は軽い調子でエンディングを迎える)

2. 【tough cookie】手ごわい相手
例)Ayumi is a tough cookie. (森田あゆみ選手は手ごわいプレーヤーだ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は色々応用が利きます。"on a different note"とすれば「話は変わりますが」、"on a final note"にすれば「最後になりますが」。色々組み合わせてみると面白いです。2つ目の表現は、女子テニス界の女王セリーナ・ウィリアムズ選手が日本の森田あゆみ選手と対戦した後のインタビューで耳にしたものです。直訳すれば「硬いクッキー」ですが、割れにくいことから「手ごわい」といった意味になったのでしょう。

 
孫引きになりますが、言語学者のカチルは、英語を3種に分類しているそうです。第1グループは母語として話されている英語(@英国、米国など)、第2グループは第二言語として話されている英語(@インド、シンガポールなど旧植民地国など)、第3グループは外国語として学習される英語(@日本、中国、ギリシャなど)です。そしてカチルは、この3グループ間に優劣はない、としています。(鳥飼玖美子「小学校英語教育―異文化コミュニケーションの視点から」大津由紀雄(編著)『小学校の英語教育は必要か』2004年、慶応義塾大学出版会)

巷では、英語を母語とする人のような発音で話すのがよい、といった風潮がありますが、カチルの主張に基づけば、日本人はもっと「日本人的発音」に自信を持っていいようです。「日本語英語」といった揶揄はやめて、いわゆるカタカナ英語でも中身ある発言を自信を持ってする―そんな英語が評価される方向にそろそろシフトしてもいい時期が来ているように感じています。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.212」を改稿)

2015年8月11日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【42】

1. 【high-flying】野心旺盛な
例)Steve Jobs was known for his high-flying business style.(スティーブ・ジョブスはその野心的なビジネススタイルで知られていた)

2. 【jump ship】退社する
例)She jumped shipp to move to a bigger company. (彼女は大企業に転職するため、退職した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


最初の表現には「高値の」の意味もあります。直訳すれば「高く飛んでいる」ですから、そこから「野心旺盛な」「高値の」といった意味に派生したのでしょう。


翻訳家の小沢瑞穂さんは2006年12月13日付の『朝日新聞』に掲載された「こころの風景 転機」で次のように述べていらっしゃいます。「三十数年、翻訳という仕事を続けてきたが、適切な訳語を捜してつむぐ仕事が楽しいと思えるようになったのは、始めてから十年くらいたった後だった。」

文脈に沿った適切な訳語を捜し出すという「翻訳の愉楽」、よくわかります。日頃から日英でいろいろな表現をストックしておき、翻訳に際して引き出しから適切な表現を引き出せたときの快感は至極のものです。これからもこのような地味な努力を続けていき、いつか小沢さんの域に達せたら、と思っています。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.211」を改稿)

2015年8月10日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【41】

1. 【holy grail】至高の目標
例)The World Cup is the holy grail of soccer.(ワールドカップはサッカー界の頂点だ)

2. 【guinea pig】実験台
例)I'd like him to be a guinea pig. (彼に実験台になってもらいましょう)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現はもともと、キリスト教に由来する「聖なる杯(さかずき)」のこと。この手に入りにくいものを求める、ということは高い目標を立てることですから、このような意味になったのでしょう。

2つ目の表現は、もともとは南米のげっ歯類であり家畜動物のテンジクネズミの意味。ネズミが実験動物としてよく使用されることから「実験台」の意味になったのでしょうか。よく使われる表現ですので、覚えておいて損はないと思いますよ。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法」の掲載忘れでスキップされた回から)

2015年8月8日土曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【40】

1. 【to a pulp】ぐにゃぐにゃになるまで
例)The guy was beaten to a pulp.(奴はボコボコにやられた)

2. 【catch-22】ジレンマ
例)The company was in a catch-22 situation. (その企業はダブルバインドな状況にあった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は、紙の原料であるパルプがどろどろの状態にあることからこのような意味になったのでしょう。一方、2つ目の表現は、ジョーゼフ・ヘラーの小説『Catch-22』(1961年)に由来しているとのこと。米軍に属する主人公は、「精神障害を理由に除隊を申し出ると、自己認識があるとみなされ逆に除隊を認められない」というジレンマに悩んだことから来ているそうです。


ニューヨークでは、“delicious(デリシャス、おいしい)”と言うかわりに“derish(デリッシュ)”と言うのが流行っているそうです。deLiciousのLがdeRishとRに変わっているいるのは、日本人がLとRの発音を区別できないところから来ている、とニューヨーク育ちの香港人が言っていました。それを聞いてボクは揶揄されたようで複雑な気持ちがしたものですが、皆さんはどう思いますか?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.173」を改稿)

現役通訳者によるお役立ち英語表現【39】

1. 【backwater man】田舎者
例)He's a backwater man.(奴は田舎者だ)

2. 【cough up】しぶしぶ出す
例)She finally coughed up the information. (彼女はついに秘密を吐き出した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


2つ目の表現は、直訳すれば「咳をしながら外に出す」。それが派生して「しぶしぶ出す」となったのでしょう。


無料情報誌『R25』の127号を読んでいたら、NECメディア情報研究所の奥村明俊氏が「音声翻訳がリアルタイムになるのか?」という問いに対して次のように答えていました:

「可能だと思いますよ。イメージとしては、携帯電話に翻訳機能が搭載されていて、携帯に向かって日本語で語りかけると英語の音声が返ってくるというものです。技術的にもかなり近づいているので、5年後には当然のように使われていてもおかしくないと思います。」

この文章は5年以上前に書かれたもので、現在では奥村さんの予言とおり、彼が描写するようなアプリが少なからず出てきています。でもボクはあえて、奥村さんの見解を「機械翻訳のユートピア」と呼びたいと思います。これまで多くの人が機械翻訳を夢見てきた、がしかし、いまだに完全・完璧な機械翻訳/翻訳機械というものは登場していないからです。

例を見てみましょう。名前は伏せますが、あるインターネット上の翻訳サービスを使用してみたところ・・・:


入 力 文:「その通りであろう」
著者英訳:I think it is right.
機械英訳:It will be the street.

これから分かる通り、「その通りit is right」が「そのthe」「通りstreet」と訳されてしまっています。また「であろう(と思われる)I think」が「であろうwill」と未来形に訳されてしまっています。

このように機械翻訳は依然としてユートピアであり、完璧な翻訳機械は
そう簡単には登場しないと予測しています(編集前提で機械翻訳を利用せよ、と主張される方はいますが)。「人間臭い」翻訳を大事にしたいボクはそれでいい、と思うのですが、これってオクレテル?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.210」を改稿)

2015年8月6日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【38】

1. 【mend fences with】仲直りする
例)I mended fences with a coworker.(同僚の1人と関係修復した)

2. 【draw first blood】先制する
例)The team drew first blood in the match. (そのチームは試合で先制点をあげた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現は直訳すれば「~とともにフェンスを直す」。 ここから派生して上記のような意味になったのでしょう。2つ目の表現は直訳すれば「最初の血を採る」。ここから「先制する」という意味になったと考えられます。スポーツ、特にサッカーに関するニュースでよく見る・聞く表現のように思います。


2007年のセンター試験も終わりましたが、英語の試験では昨年に引き続きトラブルがあったようです。その英語のリスニング試験に関して、敬愛する元同時通訳者で現在は大学教授の鳥飼玖美子氏は、「大学入試にリスニング試験は必要か?」という刺激的なタイトルのエッセイを2004年に書いています(『論座』2004年4月号)。

氏の意見は以下の文章によく表れています。「大学に入学してから必要な英語力、社会に出たときに求められる英語力は、聞く力だけではない。読む力、書く力に支えられた発信力と、相互関係を構築し維持する対話力がコミュニケーションに欠かせない。」

ある国際展示場の採用担当者と話したとき、彼は誇らしく次のように言いました。「私たちは、きちんとした英語のテストを使って、バイリンガルスタッフを雇いました」。「待てよ?」と思い、僕は「英語のテストができる人と英語でコミュニケーションがとれる人は違うと思いますが。実際英語で面接などをされましたか?」と聞き返しました。彼が返答に詰まっていた、ということは英語で面接はしなかったということ。果たしてこの国際展示場は言語面で成功裏に終わったのでしょうか。またお会いする機会があったら聞いてみたいと思っています。 
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.209」を改稿)