2015年2月17日火曜日

現役通訳者が書評をしたら【20】『だから英語は面白い 会話上手はユーモアから』


201333日、雛祭り。この日、偉大な通訳者がまたこの世を去った。その名は村松増美。享年82歳だった。

西山千、國弘正雄、小松達也、鳥飼玖美子と並び、日英同時通訳者の先駆けで、通訳学校・通訳者派遣会社として知られるサイマル・インターナショナルの創設にも関わった人物。

村松は国際的に通訳業に従事する中で、異文化コミュニケーションの潤滑油としてユーモアが欠かせないことに気づく。その気づきがきっかけとなって生まれた本書『だから英語は面白い 会話上手はユーモアから』(1999年、PHP研究所)には英語のユーモアが満載で、まるでジョークの万華鏡をのぞいているかのよう。

なかでもお腹をかかえて笑ったのは、ジョークに対する反応の国民性による差異を描き出したもの。いわゆる「メタ・ジョーク」である:

When a Frenchman hears a joke, he laughs when the joke is only half told.(フランス人はすぐオチが分かってしまうから、あるいは不躾だから)
When an Englishman hears a joke, he waits until it is finished and then laughs.(イギリス人は礼儀他正しいから、あるいは頭が硬いから)
When a German hears a joke, he philosophizes over it all night and laughs next morning.(ドイツ人は理詰めするから)
When a Japanese hears a joke, he just smiles without understanding it.(説明するまでもないでしょう…ちょっと失礼?)
When an American hears a joke, he doesn’t laugh – because he has already heard them all.(これらは実はアメリカ人がつくったジョークだそう!)

アメリカ人についてのジョークは別のバージョンも:
When an American hears a joke, he tells you it’s an old joke, and he knows a better one.

いかがでしょう。

またユーモアのみならず、私が通訳のトレーニングを受けたモントレー国際大学院があるカリフォルニア州モントレーについてのトリビアもあった。知らなかったのが、"Monterey"カナダのモントリオール(Montreal)と同じく"monte""rey"に分けることができ、"monte"は山(mountain)に、"rey"は王様(king)に由来していたこと19857月に隣接する町で国際会議があった際、モントレーに寄られている村松さんだが、当時、モントレー国際大学院の翻訳通訳大学院日本語プログラムはすでに存在していたようなのでで、村松氏ももしかしたら来校されて講演や講義を行ったのかも知れない。

ちなみにモントレーは丘状になっているが山では決してなく、またなぜ王様という意味の語が地名に入ることになったかも不明。ユーモアの極意を学べただけでなく、地名の成り立ち・由来にも気を配ればもっと自らの視点が広がるbroaden my horizonsのでは、と思わされた書でもあった。

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