2015年8月13日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【44】

1. 【clay pigeon】カモ
例)She's their clay pigeon.(彼女は彼らのカモだ)

2. 【call the shots】支配する
例)The guy was calling the shots at the site. (現場では奴が指揮監督していた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は、クレー射撃で空中に投げ上げる、土でできた皿状の標的のこと。的(まと)であることから、「カモ」という意味に派生したのでしょうか。

 

英語の神様と称される故・長崎玄弥さんは、「翻訳家は演奏家だ。同じピアノ曲でも弾くピアニストによって風情が異なるように、翻訳においても、創造的なメンタリティーが大事」とおっしゃっています(長崎玄弥『長崎玄弥の英語の攻め方』1992年,アルク,p. 137)。3歳から15歳までピアノを習っていた僕にとっては、とても分かりやすい比喩だと思いました。同じ曲であっても演奏者が異なれば全く異なる調べになるのと同様、原文が同じ英語の文章であっても日本語にする翻訳者が異なれば訳文も全く異なる調子になります。

そして長崎さんが言う「創造的なメンタリティー」を身に着けるため、ボクはできるだけ多くの本を読んだり、芸術に触れる機会をつくっています。ピアノと同様、翻訳も日々精進です。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.213」を改稿)

2015年8月12日水曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【43】

1. 【on a light note】軽い調子で
例)The book closes on a light note.(その本は軽い調子でエンディングを迎える)

2. 【tough cookie】手ごわい相手
例)Ayumi is a tough cookie. (森田あゆみ選手は手ごわいプレーヤーだ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は色々応用が利きます。"on a different note"とすれば「話は変わりますが」、"on a final note"にすれば「最後になりますが」。色々組み合わせてみると面白いです。2つ目の表現は、女子テニス界の女王セリーナ・ウィリアムズ選手が日本の森田あゆみ選手と対戦した後のインタビューで耳にしたものです。直訳すれば「硬いクッキー」ですが、割れにくいことから「手ごわい」といった意味になったのでしょう。

 
孫引きになりますが、言語学者のカチルは、英語を3種に分類しているそうです。第1グループは母語として話されている英語(@英国、米国など)、第2グループは第二言語として話されている英語(@インド、シンガポールなど旧植民地国など)、第3グループは外国語として学習される英語(@日本、中国、ギリシャなど)です。そしてカチルは、この3グループ間に優劣はない、としています。(鳥飼玖美子「小学校英語教育―異文化コミュニケーションの視点から」大津由紀雄(編著)『小学校の英語教育は必要か』2004年、慶応義塾大学出版会)

巷では、英語を母語とする人のような発音で話すのがよい、といった風潮がありますが、カチルの主張に基づけば、日本人はもっと「日本人的発音」に自信を持っていいようです。「日本語英語」といった揶揄はやめて、いわゆるカタカナ英語でも中身ある発言を自信を持ってする―そんな英語が評価される方向にそろそろシフトしてもいい時期が来ているように感じています。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.212」を改稿)

2015年8月11日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【42】

1. 【high-flying】野心旺盛な
例)Steve Jobs was known for his high-flying business style.(スティーブ・ジョブスはその野心的なビジネススタイルで知られていた)

2. 【jump ship】退社する
例)She jumped shipp to move to a bigger company. (彼女は大企業に転職するため、退職した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


最初の表現には「高値の」の意味もあります。直訳すれば「高く飛んでいる」ですから、そこから「野心旺盛な」「高値の」といった意味に派生したのでしょう。


翻訳家の小沢瑞穂さんは2006年12月13日付の『朝日新聞』に掲載された「こころの風景 転機」で次のように述べていらっしゃいます。「三十数年、翻訳という仕事を続けてきたが、適切な訳語を捜してつむぐ仕事が楽しいと思えるようになったのは、始めてから十年くらいたった後だった。」

文脈に沿った適切な訳語を捜し出すという「翻訳の愉楽」、よくわかります。日頃から日英でいろいろな表現をストックしておき、翻訳に際して引き出しから適切な表現を引き出せたときの快感は至極のものです。これからもこのような地味な努力を続けていき、いつか小沢さんの域に達せたら、と思っています。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.211」を改稿)

2015年8月10日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【41】

1. 【holy grail】至高の目標
例)The World Cup is the holy grail of soccer.(ワールドカップはサッカー界の頂点だ)

2. 【guinea pig】実験台
例)I'd like him to be a guinea pig. (彼に実験台になってもらいましょう)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現はもともと、キリスト教に由来する「聖なる杯(さかずき)」のこと。この手に入りにくいものを求める、ということは高い目標を立てることですから、このような意味になったのでしょう。

2つ目の表現は、もともとは南米のげっ歯類であり家畜動物のテンジクネズミの意味。ネズミが実験動物としてよく使用されることから「実験台」の意味になったのでしょうか。よく使われる表現ですので、覚えておいて損はないと思いますよ。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法」の掲載忘れでスキップされた回から)

2015年8月8日土曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【40】

1. 【to a pulp】ぐにゃぐにゃになるまで
例)The guy was beaten to a pulp.(奴はボコボコにやられた)

2. 【catch-22】ジレンマ
例)The company was in a catch-22 situation. (その企業はダブルバインドな状況にあった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は、紙の原料であるパルプがどろどろの状態にあることからこのような意味になったのでしょう。一方、2つ目の表現は、ジョーゼフ・ヘラーの小説『Catch-22』(1961年)に由来しているとのこと。米軍に属する主人公は、「精神障害を理由に除隊を申し出ると、自己認識があるとみなされ逆に除隊を認められない」というジレンマに悩んだことから来ているそうです。


ニューヨークでは、“delicious(デリシャス、おいしい)”と言うかわりに“derish(デリッシュ)”と言うのが流行っているそうです。deLiciousのLがdeRishとRに変わっているいるのは、日本人がLとRの発音を区別できないところから来ている、とニューヨーク育ちの香港人が言っていました。それを聞いてボクは揶揄されたようで複雑な気持ちがしたものですが、皆さんはどう思いますか?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.173」を改稿)

現役通訳者によるお役立ち英語表現【39】

1. 【backwater man】田舎者
例)He's a backwater man.(奴は田舎者だ)

2. 【cough up】しぶしぶ出す
例)She finally coughed up the information. (彼女はついに秘密を吐き出した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


2つ目の表現は、直訳すれば「咳をしながら外に出す」。それが派生して「しぶしぶ出す」となったのでしょう。


無料情報誌『R25』の127号を読んでいたら、NECメディア情報研究所の奥村明俊氏が「音声翻訳がリアルタイムになるのか?」という問いに対して次のように答えていました:

「可能だと思いますよ。イメージとしては、携帯電話に翻訳機能が搭載されていて、携帯に向かって日本語で語りかけると英語の音声が返ってくるというものです。技術的にもかなり近づいているので、5年後には当然のように使われていてもおかしくないと思います。」

この文章は5年以上前に書かれたもので、現在では奥村さんの予言とおり、彼が描写するようなアプリが少なからず出てきています。でもボクはあえて、奥村さんの見解を「機械翻訳のユートピア」と呼びたいと思います。これまで多くの人が機械翻訳を夢見てきた、がしかし、いまだに完全・完璧な機械翻訳/翻訳機械というものは登場していないからです。

例を見てみましょう。名前は伏せますが、あるインターネット上の翻訳サービスを使用してみたところ・・・:


入 力 文:「その通りであろう」
著者英訳:I think it is right.
機械英訳:It will be the street.

これから分かる通り、「その通りit is right」が「そのthe」「通りstreet」と訳されてしまっています。また「であろう(と思われる)I think」が「であろうwill」と未来形に訳されてしまっています。

このように機械翻訳は依然としてユートピアであり、完璧な翻訳機械は
そう簡単には登場しないと予測しています(編集前提で機械翻訳を利用せよ、と主張される方はいますが)。「人間臭い」翻訳を大事にしたいボクはそれでいい、と思うのですが、これってオクレテル?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.210」を改稿)

2015年8月6日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【38】

1. 【mend fences with】仲直りする
例)I mended fences with a coworker.(同僚の1人と関係修復した)

2. 【draw first blood】先制する
例)The team drew first blood in the match. (そのチームは試合で先制点をあげた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現は直訳すれば「~とともにフェンスを直す」。 ここから派生して上記のような意味になったのでしょう。2つ目の表現は直訳すれば「最初の血を採る」。ここから「先制する」という意味になったと考えられます。スポーツ、特にサッカーに関するニュースでよく見る・聞く表現のように思います。


2007年のセンター試験も終わりましたが、英語の試験では昨年に引き続きトラブルがあったようです。その英語のリスニング試験に関して、敬愛する元同時通訳者で現在は大学教授の鳥飼玖美子氏は、「大学入試にリスニング試験は必要か?」という刺激的なタイトルのエッセイを2004年に書いています(『論座』2004年4月号)。

氏の意見は以下の文章によく表れています。「大学に入学してから必要な英語力、社会に出たときに求められる英語力は、聞く力だけではない。読む力、書く力に支えられた発信力と、相互関係を構築し維持する対話力がコミュニケーションに欠かせない。」

ある国際展示場の採用担当者と話したとき、彼は誇らしく次のように言いました。「私たちは、きちんとした英語のテストを使って、バイリンガルスタッフを雇いました」。「待てよ?」と思い、僕は「英語のテストができる人と英語でコミュニケーションがとれる人は違うと思いますが。実際英語で面接などをされましたか?」と聞き返しました。彼が返答に詰まっていた、ということは英語で面接はしなかったということ。果たしてこの国際展示場は言語面で成功裏に終わったのでしょうか。またお会いする機会があったら聞いてみたいと思っています。 
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.209」を改稿)

2015年8月4日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【37】

1. 【with kid gloves】慎重に
例)You need to treat him with kid gloves.(彼は慎重に扱った方がいいよ)

2. 【take a back seat】目立たないようにする
例)Money takes a back seat to your health. (健康に比べれば金は二の次だ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


2つ目の表現は直訳すれば「後部座席に座る」ですが、そこから「目立たない」という意味に派生したのでしょうね。


前回、2006年のWOTY(Word of the Year、「今年の言葉・流行語」)についての話をしましたが、米方言学会は2006年のWOTYを"Pluto(冥王星)"にしたそうです。

ところで最近、この“Pluto”という単語が「(職場などで)降格させる」の意味で使用されているそうです(『朝日新聞』、2007年1月10日)。ご存知のように冥王星は2006年、惑星から矮惑星へと「降格」しました。

したがって「おまえ、降格しちゃうよ!」と言う場合、”You'll get plutoed!”となります。それにしても新語の創出という現象はとても面白いですね。皆さんも降格にはお気をつけあれ!Don't get plutoed!

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.208」を改稿)

2015年8月3日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【36】

1. 【all the rage】大流行して
例)The song was all the rage when I was in junior high.(この曲は中学時代、大流行していた)

2. 【meat-and-potatoes】ありふれた、基本的な、重要な
例)He's a meat-and-potatoes type of person. (彼はふつうの目立たない人間だ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現はin fashion、in vogueとも言い換えられますね。2つ目の表現と関連して、simmered
meat and potatoesと言えば肉じゃがのことになります。アメリカでは肉料理に(マッシュ)ポテトが添えられて出されるのは定番ですから、ここから派生して「ありふれた」「基本的な」といった意味になったのでしょう。



『The Japan Times Weekly』の2006年12月30日号には、『The Japan Times』12月10日号に掲載された「Our Words of the Year」という記事が転載されていました。2006年のWOTY(Word of the Year、今年の言葉・流行語)に関するもので、同紙が選んだWOTYの第1位は「dwarf planet(矮小惑星)」。惑星から降格した「冥王星」が属する新カテゴリーの名称です。10年ほど前の少し古い事象(事件?)ですが、ボクたちが教えられ、信じてきた冥王星についての「真実」が「真実」ではなくなってしまい、まさに驚きの「パラダイム転換paradigm change」でした。

ところで、みなさんの今年のWOTYはもうみつかりましたか?

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.204」を改稿)

2015年8月2日日曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【35】

1. 【well-heeled】金持ちの
例)He's leading a well-heeled life.(彼は裕福な生活を送っている)

2. 【cosplay】
例)She's a cosplayer. (彼女はコスプレ好きだ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現については、the well-heeledとすると名詞化されて「富裕層」の意味に。well-offとほぼ同義ですね。人よりもかかとが高い、ことから比喩的にこのような意味になったのでしょう。ちなみにハイヒールを履くは"wear high heels"。2つ目の表現は、日本語英語のコスプレ=スチューム・プレイが「逆輸入」されて英語になったもの。ただし日本好きの外国人にしか通じないかもしれません。先日、実際にネイティブに使ってみたところ、「スーツなどのしっかりしたコスチュームを着て舞台(play)で演技すること?」と言われてしまったので、相手をみて使いましょう。。なお、コスプレ喫茶は"cosplay cafe"になります。


『ブラッカムの爆撃機』『かかしと召し使い』『エリオン国物語 I』等を翻訳されている法政大学教授(児童文学研究)で翻訳家の金原瑞人さんは、英文を訳す際のコツとして英文を「カメラワークで読んでいくといい」とアドバイスしています(「自然な日本語、息づく訳を」『朝日新聞』2006年12月6日)。例として“I met a beautiful girl who wore a hat and scarf set.”という文を挙げ、この文をカメラワークを意識して訳すと「女の子がいる。可愛い子だ。よく見ると帽子とスカーフを身につけている」となるとのこと。リズムのある、秀逸な訳に思えます。
 

カメラワークを意識して翻訳してみるとは考えたこともなかったなぁ。次回、カメラワークが生かせる翻訳事案が来た際にはぜひ試してみたいと思います。ちなみに金原さんの娘さんはあの『蛇にピアス』で芥川賞を受賞した金原ひとみさん。最近、その英語版「Snake and Earrings」を入手したので、早速半分ほど読みました。もちろん英訳の力量にも左右される部分はあるとは思いますが、それを差し引いても、読者を惹きつけて止まない卓抜な物語展開。良い意味での、蛙の子は蛙、です。その筆力に羨望の眼差し、です。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.203」を改稿)

2015年7月28日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【34】

1. 【firebrand】扇動者
例)The dictator is spreading firebrand politics to the public.(その暴君は国民に扇動政治を広めている)

2. 【out of touch】現実を把握していない
例)She was out of touch with the news. (彼女はそのニュースを知らなかった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


敬愛する村上春樹さんは、あるエッセイで誤訳について述べていて、「もしそれが『誤訳』であるのなら、僕は進んでその『誤訳』を背負って、それに殉じてもいいとさえ思っている」とおっしゃっています(「俺と僕と私」『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』、新潮文庫、p. 300)。

やはり村上さんぐらいの一流の翻訳家ともなると「誤訳とともに殉死する」くらいの度胸が必要なのですね。ところで気になるのが、村上さんが「誤訳」と、誤訳の文字を鍵括弧に入れている点です。英語は色々な日本語に翻訳することができ、翻訳者が100人いれば100通りの訳が生まれます。だとしたらいったいどこまでが「正しい翻訳」で、どこからが「誤訳」なのでしょうか。これは簡単には解けない難問のような気がしています。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.202」を改稿)

2015年7月26日日曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【33】

1. 【honcho】リーダー
例)He's the head honcho of the organization.(彼は組織のトップだ)

2. 【have teeth】効力を持つ
例)This contract has no teeth. (この契約書はざるだ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現については、日本語の「班長」に由来する単語です。以前、「かわいいkawaii」や「過労死karoshi」が英単語としてそのまま使用されている、という話をしましたが、「班長」もそうだったんですね。


「The Japan Times Weekly」の2006年9月30日号(6面)によると、村上春樹さんが短編集"Blind Willow, Sleeping Woman"でThe Frank O'Conner International Short Storyを受賞されたとのこと。ファンの僕としては嬉しい限りですが、同記事で村上さんが"Novelist and translator"と紹介されていました。

サリンジャーによる不朽の名作『ライ麦畑でつかまえて』の新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』などを手がけている村上さんですが、小説家としてだけでなく、翻訳家としても国際的に認知されているんですね。以前、何かの媒体で村上さんは「翻訳をすることは小説を執筆する際によい影響がある」とおっしゃっていましたが、逆に翻訳者が小説家になった例は寡聞にして知りません。最近、『嵐が丘』の新訳を担当された鴻巣友季子さんがエッセイ集を出していらっしゃいますが、小説ではないようです。どなたか翻訳者が小説家になった例をご存じでしたら教えてください。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.201」を改稿)

現役通訳者によるお役立ち英語表現【32】

1. 【with a grain of salt】(話を聞く際に)割り引いて(聞く、考える)
例)We should take her story with a grain of salt.(彼女の話は割り引いて聞いたほうがいい)

2. 【(up)on the horns of a dilemma】ジレンマに陥って
例)I found myself impaled upon the horns of dilemma. (僕はどっちつかずの状態にあった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初の表現は、塩気のない物(=信用できない話)はそのままでは食べられないので一粒の塩を加えて食べる、ということに由来しているようです。2つ目の表現は直訳すると「ジレンマの角に乗って」。そこから派生して「ジレンマに陥って」という意味になったようですね。同じ意味で"I'm in a catch-22 situation."とも言えます。hornを使った他の表現には"I'm on the horn."(電話中です)があります。


桐野夏生さんの著された『OUT』という小説が、アメリカを始めとして国際的に注目を浴びているそうです。その桐野さんの作品が翻訳されて海外に流通される際に、「言葉の壁」に加えて「文化の壁」があったようです。例えば、子どもの誘拐をテーマにした作品『柔らかな頬』はアメリカでの出版が見送られた、と桐野さんはインタビューでおっしゃっています。(『Asahi Weekly』2006年10月29日号、p. 8。インタビューは中村紀子。)

単にすばらしい作品であればそのまま翻訳されて海外に流通する、という訳ではないんですね。「社会的影響」と「言論の自由」との間のせめぎ合いがあるようです。ちなみに『OUT』の翻訳版は手元にあるのですが積読状態になっています。早速ページを繰ってみることにします。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.200」を改稿)

2015年7月24日金曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【31】

1. 【big-ticket】高額な
例)I made a big-ticket purchase.(私は高額なモノを1点買いした)

2. 【down to the wire】仕上げにかかって
例)We're getting down to the wire. (作業は最終局面を迎えている)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現は、チケットのなかでも大きな(=高額な)チケット、というところからこのような意味になったのでしょうか。



小林智香子さんは、野中柊『ヨモギ・アイス』と藤野千夜『おしゃべり会談』を英訳された翻訳家。その際に出くわした翻訳の難しさについて、小林さんは次のように述べています(『Asahi Weekly』2006年10月29日号、p. 12)。

One of the story characters eats “Peyang sauce yakisoba” (ぺヤングソース焼きそば). Japanese can immediately grasp the certain nuance these words have, but it might be difficult for native English speakers to understand. “I always considered whether it is worth explaining in sentences at a risk of cutting the flow of a composition or just leave it as it is and ask the reader to grasp the situation.”
 

小難しい言い方をすれば「翻訳不可能性」についての文章ですが、小林さんの英訳時の苦労が伝わってくる文章です。ぜひ読んでみてください。
 (まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.199」を改稿)

2015年7月23日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【30】

1. 【root and branch】徹底的に
例)The specialist eradicated the disease root and branch.(専門家はその疾病を根絶した)

2. 【couch doctor】精神科医
例)The child sees a couch doctor on a weekly basis. (その子は1週間に1度、セラピーを受けている)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

root and branchは直訳すれば「根っこと枝」。根っこから枝まで木の全体を表現することで、「徹底的に」という意味になったと考えられます。2つ目の表現は、精神病学の始祖フロイトがカウチを使って治療を行ったことから由来している表現と推察されます。


戸田奈津子さんのご尽力によって人口に膾炙した字幕翻訳は、その性質上、字数の制限があります。村上春樹さんは字幕翻訳を「俳句とかコピーライティングの世界に近い作業」と喝破しています(「ダーティ・ハリー問題」『村上朝日堂』新潮文庫、p. 182)。ボクのとってコピーライターは昔からなりたいと思っていた憧れの職業であり、加えて俳句ではありませんが短歌をかじっていることもあって、字幕翻訳は一度チャレンジしてみたい分野です。

映画のなかで、短くてインパクトがあり、かつ一瞬で理解できる字幕翻訳に出くわすたびに、嘆息しているのはボクだけでしょうか?

 (まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.198」を改稿)

2015年7月14日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【29】

1. 【from ear to ear】口を大きく開いて
例)The lady smiled from ear to ear.(その女性は満面の笑みを浮かべた)

2. 【racket】いかがわしい商売
例)He's involved in criminal rackets. (彼は犯罪に当たるようないかがわしい商売に関わっている)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現は、口を大きく横に開くと、片耳からもう片方の耳へ広げたようにみえることに由来しているようです。2つ目のracketについては、ついテニスや卓球のラケットを思い起こしてしまいますが、上記のような意味もあること、覚えておきましょう。


第23回で、若い女性が主人公の物語、例えば『ブリジット・ジョーンズの日記』や『The Sex and the City』といった作品をChick Lit(chickのliterature、つまり若い女性の文学)と呼ぶ、と紹介しましたが、インドネシアでもこのChick Litが流行っているようです(2006年10月14日号『The Japan Times Weekly』、第19面)。厳しい検閲が敷かれていたスハルト政権が終焉を迎え、人びと、特に女性たちは以前に比べて自由に性愛を語るようになってきています。女性の性愛が明け透けに語られるChick Lit、同国でのその興隆は、女性たちの変貌(解放)と相関した、興味深い動向だと言えます。(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.196」を改稿)

2015年7月13日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【28】

1. 【behemoth】巨大なもの
例)She works for a corporate behemoth as an executive.(彼女は巨大企業のエグゼクティブだ)

2. 【slush fund】不正資金
例)The deal was done through slush fund. (その取引は不正資金を使って行われた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初のbehemothはもともと、聖書に登場するビヒモスのことで、ヨブ記に出てくるカバのような巨獣。派生して「巨大なもの」全般を意味するようになったのでしょう。2つ目のslushはslash(斜線)ではないので綴りに気をつけて下さい。ちなみにslush avalancheは「雪崩」を意味します。


2006年9月10日号「Asahi Weekly」に掲載されていた「辞書GAKU事始め」(磐崎弘貞氏)によると、日本初の外国人英語教師とされているラナルド・マクドナルド(Ranald MacDonald)は、当時鎖国をしていた1848年、難破を装って日本に入り込みます。しかし捕まってしまい、7カ月間の監禁を経験します。しかしその後、長崎奉行に見込まれたマクドナルドは、通詞(当時の通訳者を指す語)に英語を教え始めます。そのマクドナルドからヒントを得た外国語習得のコツとして磐崎氏は次の4つを挙げています。

(1)異文化に対する知的関心

(2)読解と並行して、口語/リスニングの重視
(3)新しく仕入れた知識はメモする
(4)英語辞書の最大限の活用

「温故知新」ではないですが、マクドナルド日本上陸から150年以上経つ現代でも、(1)~(4)のいずれのコツも英語学習のヒントになりそうです。ボクも特に(4)は参考にしてみたいと思いましたし、皆さんも気になるものがあれば試してみてください。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.194」を改稿)

2015年7月12日日曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【27】

1. 【on a tear】大騒ぎして
例)The guys went on a tear.(奴らはどんちゃん騒ぎをしていた)

2. 【buzzword】流行語
例)He uses lots of buzzwords. (彼ははやり言葉をよく使う)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初のフレーズにあるtearはもちろん「涙」の意味ですが、on a tearになると全然違う意味になるんですね。2つ目のbuzzwordですが、最近、ボクの住むアメリカで耳にしたbuzzwordはeye candy。直訳すれば「目にとってのキャンディー」ですが、転じて「目の保養になるようなステキな人」という意味だそうです。


ボクが生業(なりわい)とする通翻訳は日本語能力がポイントになってくるので、言葉を武器とする社会学者の本をよく読みます。最近読んだ社会学系の本の中で、内容もさることながら、その日本語のセンスに感動したのが上野千鶴子さんの『生き延びるための思想』(2006年、岩波書店)。特に冒頭の「はじめに-あげた手をおろす」と、最後の「あとがき-『祈り』にかえて」は圧巻で、言葉がこれほど人を感動させるものかと感じさせられました。社会学に興味のない方でも、日本語の美しさ・力強さという観点から、ぜひ読んでみてください。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.192」を改稿)

2015年7月7日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【26】

1. 【fare well】うまくいく例)The stock market is faring well. (株式市場は好調だ)

2. 【in the bag】手中に収めて
例)I have two trophies in the bag. (私は2度、優勝している)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


1つ目のfare wellは、一語にすればfarewell。しかしfarewellの意味は「別れの言葉」「送別会」などであり、fare wellとはまったく異なる意味になります。

2つ目のin the bagはunder one's beltでも言い換えられます。つまりI have two trophies under my belt.とも言えます。また、in the bagには他にも「解決して」「酔っぱらって」といった意味もあります。Everything is in the bag. と言えば「すべて解決済みだよ」、I’m in the bag.と言えば「酔っちゃった」となります。ちなみに、What's in the bag?と言えば「元気でやってる?」の意味にもなります。


村上春樹さんが観ていたヴェトナム戦争を主題とした映画で、次のような場面がありました。あるパイロットが「どのくらいヴェトナムにいた?」と聞かれて“Two turns and a half”と答えていたシーンです。その日本語の字幕は「二往復半」となっていたそうですが、村上さんはヴェトナム戦争の“one turn”は二年とどこかで読んで知っていたから、「二期半」と訳すべきであると気が付いた、とおっしゃっています(「ヴェトナム戦争問題」『村上朝日堂』新潮文庫、p. 176)。あるいは「5年」と訳してもいいかも知れませんね。

村上さんのエッセイは約20年前に書かれており、今はインターネットがあるので、上記のような疑問はすぐに解決できるようになりました。しかし、翻訳の「カン」みたいなものは常日頃からアンテナを高くすることで鍛えておかなければなりません。そのようにしていると様々な事象の背景知識(雑学?)が増えるため、英語自体の理解度も格段にアップするでしょう。背景知識の習得も外国語を学ぶコツかも知れませんね。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.191」を改稿)

2015年7月6日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【25】

1. 【theater】戦域
例)The place was a theater of WWI. (その土地は第一次世界大戦の戦場だった)

2. 【heavy hand】締めつけ
例)The ruler ruled the country with a heavy hand. (統治者は専制政治を敷いた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

Theaterというとつい「映画館」を思い浮かべてしまいますが、「戦域」という 意味もあるんですよね。ほかにも「階段教室」(確かに映画館みたいですよね)や「劇作品」といったような意味もありますので、気になる方は辞書を確認してみてください。芋づる式勉強法も英語学習には役立ちます。


第17回で、機械が翻訳者や通訳者の仕事を奪う可能性はない、と述べましたが、元同時通訳者で、現在大学で教鞭をとっている鳥飼玖美子さんも同様のことをおっしゃっていました(『異文化をこえる英語 日本人はなぜ話せないか』1996年、丸善)。以下に引用したいと思います。

「コンピューターが発達して自動翻訳機械ができたら、通訳者は失業するんじゃないですか?とまじめに心配してくれた人がかつていたが、とんでもない。機械での翻訳には限界があるということがわかって(そんなことは通訳者は皆、最初から知っていた)、通訳者の需要は減るどころか、ますます増えている。言語というものはすぐれて人間的なものであり、外国語学習も人間的要素こそがもっとも重要なのである。」(pp. 151-152)

また社会学者の上野千鶴子さんも翻訳の問題に関して「テクノロジーは合理的だが言語は非合理的である。それをニューメディアが解決してくれることなどなそうだ。」とおっしゃっています(『国際円卓議論・本の未来』1999年、大日本印刷株式会社ICC本部)。


「あの」鳥飼さんや上野さんも同じようなことを言っているということは、機械が翻訳者や通訳者の仕事を奪う可能性はない、と考えてもいいかも知れませんが、ご発言はともに1990年代後半。テクノロジーがさらに進歩した2015年、今どのようにこの問題を考えていらっしゃるのか、お二人に聞いてみたい気がしています。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.189」を改稿) 

2015年7月4日土曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【24】

1. 【kingpin】影響力がある人
例)The politician is a kingpin. (あの政治家は大物だ)

2. 【tweedy】カジュアルな
例)The businessman always wears tweedy. (あのビジネスマンはいつもカジュアルウェアだ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


kindpinはボウリングのヘッドピンのこと。ここから派生して「大物」という意味になったのでしょう。一方、tweedyはtweedという名詞から派生した形容詞で、tweedは服の生地のツィードのこと。ツィードはスーツなどの生地に比べたらカジュアルであることから「カジュアルな」という意味になったと考えられます(少なくともそう覚えておけば忘れませんよね)。


アメリカの哲学者であるクワインは、二言語間での翻訳は全く別の趣旨の文に翻訳されうるのであり、どちらが正しいかについては答えがない、どちらも正しいと言っています。この問題は「翻訳の不確定性」と呼ばれていますが、翻訳という行為は、単に言語間の言葉の置き換えという実践を超えた、哲学者も取り組む深いテーマのようです。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.188」を改稿)

2015年7月3日金曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【23】

1. 【cliff-hanger】ハラハラさせるもの
例)The tennis match was a cliff-hanger. (そのテニスの試合は大接戦だった)

2. 【hard sell】押し売り
例)That's a hard sell! (そんな無茶な!)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1つ目の表現は、cliffとhangerの2つの単語の合成語で、崖(cliff)からぶら下がった状態(hanger)からこのような意味になったようです。1993年に封切りされた米仏共同制作の映画「クリフハンガー」をご覧になった方は、主人公が崖からぶら下がっている映画のシーンを思い出せば首肯、と言う感じでしょうか。


小・中学時代を米国で過ごし、夫・石井一久のドジャース入団に伴ってロサンゼルスに移住したフリーアナウンサーの木佐彩子さんは、以前どこかで「海外のドラマは語学を学ぶのにぴったり」と話していました。

ボクも海外ドラマが好きで、一時はよくみていました。木佐さんがおっしゃるように英語力の向上にも役立ちうえに、舞台となっている国と日本との文化的な違いもよくわかります。おススメはちょっと古いですが「The West Wing」。邦題は「ホワイトハウス」になっていますが、その理由は、ホワイトハウスの中枢が西棟(west wing)にあるためです。ほかにも無数の作品がでているので、ハマれるものを1つみつけて、趣味を兼ねた英語の勉強をしてみてください。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.183」を改稿)

2015年7月2日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【22】

1. 【on tenterhooks】ピリピリしている
例)My daughter is being kept on tenterhooks. (娘は最近ずっと気を張り詰めている)

2. 【on the horizon】近い将来に
例)There's a sign of an economic recovery on the horizon. (経済回復の兆しがみえる)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


2つ目の表現と関連して、clouds on the horizonを取り上げておきたいと思います。悪いことが起こりそうなときに使う表現で、There seems to be clouds on the horizon.と言えば、「何か悪いことが起きそうだ」となります。またon the horizonの同義語としてdown the line、moving forward、going forward、in the near future、in the immediate futureが挙げられます。表現の幅を広げるためにも、これらも一緒に覚えておきましょう。




2006年8月26日付『The Japan Times Weekly』の「British adults look to mum and dad for extra money」という記事によると、イギリスの25歳以上の若者で親に金銭的に依存している人のことを「BOMAD」(Banking On Mum And Dad、つまり、母と父を当てにすること)と呼ぶそうです。日本でも一時、「パラサイト」という言葉が流行りましたが、パラサイトたちも団塊の世代に当たる親の潤沢な資産に依存しており、BOMADはそのイギリス版と言っていいでしょう。

また同記事は、BOMADの原因の1つとして、若者の「”Spend now, save later”culture」を指摘します。このフレーズは直訳すると「『消費は今、貯蓄は後』文化」。でも超訳(?)で「キリギリス文化」と訳してもいいかも知れませんね。



それにしてもこのBOMAD、nomad(遊牧民)とかけているのでしょうか。9年後の今、まだこの言葉がイギリスで流通しているのか、気になるところです。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.181」を改稿)

2015年7月1日水曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【21】

1. 【make a killing】大儲けする
例)I made a killing in business. (事業が成功し、ぼろ儲けした)

2. 【play musical chairs】権力争いをする
例)I had to play corporate musical chairs. (会社で権力闘争に巻き込まれた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。





2つ目のplay musical chairsはもともと「椅子取りゲームをする」という意味で、そこから派生して「権力争いをする」という意味になったのでしょう。  

若い女性が主人公の物語、例えば『ブリジット・ジョーンズの日記』や『The Sex and the City』(もともとは本として出版され、その後テレビシリーズ化)などをChick Lit(chickのliterature、つまり若い女性の文学)と呼ぶそうです。chickが差別用語に当たるのでは、という疑問はさて置き、このようなジャンルに興味のある方は原書で読んでみてはいかがでしょうか。英語のスキルアップにつながるうえ、興味があるので長続きすると思います。興味関心は継続のもと、そして継続は力なり。ぜひ1度お試し下さい。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.179」を改稿)

2015年6月30日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【20】

1. 【with no strings attached】付帯条件なしで
例)This is a gift for you, with no strings attached! (下心なしの心からのプレゼントだよ!)

2. 【put the moves on 】ナンパする
例)She was putting the moves on me. (彼女は私を口説いてきた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

2番目の表現との関連では、"Bad move!"という表現もあります。これは「止めておいたほうがいいよ!」という意味になります。あわせて覚えておきましょう。


前回も紹介した村上春樹・安西水丸著『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』(新潮文庫、1999年)の中に、「もっと人間味のある辞書があってもいいだろう」という村上さんのエッセイが収められています。そこで村上さんは「英文学者にしてベテラン翻訳家、飛田茂雄氏の労作『探検する英和辞典』(草思社)[中略]を便所に置いて、毎日ちょっとずつ読んで、長い期間をかけてしっかりと読破した」と述べます。そして「翻訳を志している方には、あるいは英語を読むことに興味を持っておられる方には是非とも便所[中略]に一冊常備していただきたい本であると思う」(p. 172)とおっしゃっています。

僕も小さな辞書を最初から読み始めて挫折した経験があるのですが、あのレベルまでの翻訳家になるにはやはり辞書丸ごと一冊ぐらい読まなければならないのかも知れませんね。一昔、辞書を1ページずつ読み、読み終わるごとにページを食べていって読破した人がいた、という話を聞いたことがありますが、そこまでする必要はないとは思いますが(笑)。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.178」を改稿)

2015年6月29日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【19】

1. 【take the edge off~】~を和らげる
例)Chocolate took the edge of my hunger. (チョコレートで飢えをしのいだ)

2. 【dog and pony show】つまらないもの
例)The TV program was a dog and pony show. (あのテレビ番組は退屈だった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

edgeは尖った部分のことですから、それを取り除くtake offということで「和らげる」という意味になったのでしょう。一方で「犬とポニーのショー」が「つまらないもの」という意味になった経緯は、田舎でしばしみられるそのようなショーがつまらないから、とうい理由のようですが、それにしても犬とポニーがかわいそうですね。。


村上春樹・安西水丸著『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』(新潮文庫、1999年)を読みました。村上さんは多くの文藝翻訳を手掛けていらっしゃいますが、文中に「翻訳の本当の面白さは、優れたオーディオ装置がどこまでも自然音を追求するのと同じように、細かな一語一語にいたるまでいかに原文に忠実に訳せるかということに尽きる。[中略]僕は翻訳をやればやるほど、ますます痛切にそう感じるようになった」(「趣味としての翻訳」p. 71)という発言があります。本当におっしゃる通りだと思います。通訳もそうですが、元の文をまったく違う言語に置き換える際、どうやったら原文の意味を最大限に伝えることができるのか、本当にこれは至難の業ですし、経験と年数、勘とセンスがものを言うところではないでしょうか。

また、この前のページで村上さんは「翻訳が根っから好きだという人にそんなにひどい人はいないのではないか。」ともおっしゃっています。「忠実」さが求められる翻訳、自分はさておき(笑)、たしかにそれに従事する人にはあまり「ひどい人」はいないような気がするのですが、いかがでしょう?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.176」を改稿)

2015年6月28日日曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【18】

1. 【on the never-never】分割払いで
例)I purchased the gadget on the never-never. (ボクはその小物を分割払いで購入した)

2. 【cat's pajama】最高のもの・人
例)Watching that premier movie was the cat's pajama. (あの名作がみれて感動ものだった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

ちなみにnever-never landとすれば「桃源郷」。ピーターパンのネヴァーランドを思い浮かべていただければいいでしょう。cat's pajamaについては、bee's kneesという表現でも代用可能です。




西垣通さんの『こころの情報学』(ちくま新書)を読みました。西垣さんは「サイバースペースにおける英語単一言語主義」と「インターネット多言語主義」に言及し、ネット上では、短期的な効率の点から言うと国際共通語の英語を使用するのが好ましいが、英語だけを特権的に優先させる安易な規範化には反対し、言語空間を豊かにしてくれる多言語主義が大事ではないかとおっしゃっています。

ボクも西垣さんの意見に賛成です。でもネット上では英語でやらなければならない、でも英語帝国主義に陥らないように自文化の言葉も大切にしなければならない、 バランスを保つのはそう簡単なことではなさそうです。正答はなく、catch-22(板挟み)のなかでTPOに応じてバランスを見極めていくしかない、そう考えています。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.175」を改稿) 

2015年6月21日日曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【17】

1. 【clean out one's desk】解雇される
例)He was forced to clean out his desk and leave the company. (彼は意思に反して解雇され、会社を去った)

2. 【gain currency】流通する
例)The word has gained currency. (その単語は人口に膾炙した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

clean outは「きれいにする」という意味で、clean out one's deskは「机をきれいにする」、そこから比喩的に「解雇される」ことを意味するようになったようです。一方、currencyは「通貨」の意味ですが、通貨は流通の手段。ここからgain currencyは「流通する」という意味になったのでしょう。


山手線の社内で、ある男性が車内で放映されていた英語学校のCMを見ながら、「機械が発達したら、通訳者も翻訳者もあがったりだねー」と話していました。でも人間同士のコミュニケーションには人間にしかわからない機微があり、機械が翻訳者や通訳者の仕事を奪うことはない、と確信しています。機械が人間を操作する時代、未来小説なんかではよく取り上げられるテーマですが、そんな時代は通翻訳者のみならず、だれにとっても来てほしくない未来、と言っていいのではないでしょうか?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.170」を改稿)

2015年6月16日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【16】

1. 【cabin fever】室内に長いこといた結果、生じるストレス
例)I've got cabin fever after staying at home for several days. (数日家から一歩も出なかったのでストレスが溜まった)

2. 【metrosexual】オシャレだがゲイではない男性
例)He's so metrosexual. (彼はとてもメトロセクシュアルだ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初のcabin feverは直訳すると「小屋の中で生じた熱」。転じて上のような意味になったのでしょう。metrosexualはmetropolitan(都会の)+heterosexual(異性愛者の)の合成語です。どちらも比較的単語から意味を想像しやすい語彙ですね。



ネイチャー・ライティングという分野があります。簡単に言えば、自然と人間の関係を描いた文学のこと。現代の代表的なネイチャー・ライターにア ニー・ディラード(Annie Dillard)という人がいます。この人の本のうち、『本を書く』(原題:The Writing Life)(訳:柳沢由実子/出版:株式会社パピルス)はさっぱりとした内容で、かつ読みやすい、隠れた名訳です。内容という意味でも、翻訳とい
う意味でも、ぜひご一読ください。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.170」を改稿)

2015年6月15日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【15】

1. 【mouse potato】パソコンを長時間いじっている人
例)The businessperson at the cafe is a mouse potato. (あのカフェのビジネスパーソンはずっとパソコンをいじっている)

2. 【himbo】容姿だけで中身のない男性
例)My ex turned out to be a himbo. (元彼は見かけ倒しだった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

couch(ソファー)に寝そべってポテチを食べながら長時間テレビをみる人をcouch potatoと言いますが、1つ目のmouse potatoはそのcouch potatoをもじったものです。一方、2つ目のhimboはbimbo(容姿だけで中身のない女性)をもじったものです。最初の"h"は"he/his/him"の"h"に由来するのでしょうか、いずれにしても男性だったらhimboとは呼ばれたくないですね。

実を言うと、アメリカに住んでいてこの2つの言葉を実際に耳にしたことはないのですが、その理由は少し前に流行った言葉だからかも知れません。ボクがアメリカに来たのは2011年でしたが、上の2つの単語は「The Japan Times Weekly」の2006年7月15日号の記事でみかけたもので、アメリカで最もよく売れている辞書の1つ『Merriam-Webster Collegiate Dictionary』に同年掲載が決まったものでした。新単語は現代の世相が映し出される鏡です。タッチスクリーン・ブームの今、もはやmouse potatoではなくfinger potatoといった方がいいのでしょうか?!



朝日新聞の2006年7月4日(火)の「単眼複眼」では、「翻訳文学嫌いのアメリカ孤立脱却へ日本が一役」と題する特集が組まれていました。その記事では、アメリカは「文化的辺境」で「文化的孤立」の状態にあると看做されています。その理由は、同国では翻訳出版があまり進んでいないため、とのこと。 でも2015年の今日、アメリカの本屋に行くと、日本の作品含め、多くの翻訳作品が店先に並べられている印象があります。

また同記事では、「30代半ば以下の世代は日本のアニメや漫画、大人になっては村上春樹を通して、アメリカ的な自由とは異なる日本的な自由を知った。ユダヤ・キリスト 教的な一元論ではなく、万華鏡のように断片的な宗教観。矛盾を受け入れ、共生する文化です。」いう東京大学講師のローランド・ケルツさんの言葉が引用され ています。「インターネットで文化のスピードが速くなった。アメリカ人を待たせてはいけない。村上春樹の次の世代を紹介しないといけない。」。その後、現在にいたるまで、村上のように世界で通用する「次の世代」は登場していないように思います。ポスト村上春樹は誰になるのでしょうか。その前に、個人的には、村上にノーベル文学賞をとってもらいたいですが!
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.165」を改稿)

2015年6月13日土曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【14】

1. 【beer-gutted】ビール腹
例)The old guy is beer-gutted. (あのおじさんは太鼓腹だ)

2. 【hard cheese】(嫌味で)お気の毒様
例)Hard cheese! (ご愁傷さま!)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

1番目の単語のgutはハラワタのことで、gutを動詞として使い、それにbeerをつけることで出来上がった単語です。日本語でも「ビール腹」といいますから、日本語・英語で共通した表現になっており、興味深いですね。英語が日本語に導入されたのか、あるいは日本語の表現が英語になったか、それとも他に理由があるのでしょうか。2番目の表現については、もともと軟らかかったチーズが固くなってしまって美味しくなくなったことから来た表現かな、と想像してみましたが、由来はさておき、そのような仮の理解をしていれば覚えやすいですね。


2006年4月24日付朝日新聞の「きょうの論点」では、元・立教大学教授(現・順天堂大学教授)で元同時通訳者の鳥飼玖美子氏と元国際教養大学長の故中嶋嶺雄氏が小学校英語について議論を戦わせていました。鳥飼氏は反対、中嶋氏は賛成の立場を採っています。私は鳥飼氏と同じ反対派。その理由は、小学校時代はやはり、よい日本語の文章で書かれたよい小説や古文、漢文を読むなどして日本語力を鍛えることに集中した方がいいと考えるためです。日本語力はあらゆる語学学習の基礎であり、英語は中学校からで十分だと思います。もし敢えて小学校英語を実施するのであれば、発音に特化した形で行うのがいいのでは、と思っています。発音の習得は早ければ早いほどいいので、その基礎さえできていれば、語彙を追加することは後の段階でいくらでもできます。これが学校教育を主軸として日英の通訳者になったボクの意見ですが、皆さんはどう思われますか?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.163」を改稿)

2015年6月11日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【13】

1. 【hot seat】苦しい立場
例)The con artist is on the hot seat. (そのペテン師は苦境に立たされている)

2. 【on the ropes】絶体絶命で
例)Our business is on the ropes. (我々の事業は青色吐息だ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

「hot seat」は直訳すれば「焼けるように熱い席」。そのような席に座っている・座らされている、ということは苦しい立場にある、ってことですよね。一方、on the ropesは、危なっかしく綱渡りをしている様子に由来するのか、それともボクシングでロープ際に追い詰められている様子に由来するのかは分かりませんが、いずれにしてもピンチな状況にいることは変わりなく、何となく意味を想像することができるかも知れません。



クールジャパンの影響か、「カワイイkawaii」は国際的に流通した日本語となりました。一昔前ですと、国際的に通用する日本語の代表格といえば「カロウシ」。こういった国際的流行語がその時々の日本を象徴しているとしたら、「過労死」から「可愛い」への移行は好ましい推移なのかも知れません。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.161」を改稿)

2015年6月9日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【12】

1. 【go a long way】長持ちする
例)This pen has gone a long way. (このペンは長持ちしている)

2. 【self-made】独立独歩の
例)I'm a self-made man! (オレは叩き上げの人間なんだ!)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

go a long wayには「役立つ」という別の意味もあります。"Smiling goes a long way."と言えば、「スマイルは結構効果がある」となりますので併せて覚えておきましょう。


英語の“goose”(雁)には「とんま・間抜けな人」の意味があります。また“lame duck”(歩行が困難なアヒル)には「無能な政治家、破産者、赤字企業」の意味がありますが、鳥好きの友人に言わせると「鳥がかわいそうでたまらない」そうです。どうして一部の鳥にはこのようなマイナスの意味が付いてしまったのでしょうか?ご存知の方、不憫な友人のためにもぜひご教授を!
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.160」を改稿)

2015年6月8日月曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【11】

1. 【free-wheeling】自由な
例)We had free-wheeling discussions. (我々はブレストをした)

2. 【champion】(形容詞で)すばらしい
例)That is so champion! (それは卓抜だ!)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

今回の2つの表現も、「自由に回転する車輪のような」→「自由な」、「(名詞で)優勝者」→「(形容詞で)すばらしい」と、ともに何となく意味が想像できますね。



桜井亜美さんのデビュー作で映画化もされた『イノセント ワールド』(幻冬舎)。タイトルを始めとし、本作品はカタカナで溢れています。主人公の名前でさえ「タクヤ」と「アミ」で、これを目にしたときの最初の印象は「まるで翻訳小説みたい」。グローバル化のこの時代、日本人の名前までカタカナ化されてしまうのでしょうか。ミナサン、ドウカンガエマスカ?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.157」を改稿)

2015年6月7日日曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【10】

1. 【sea change】大転換
例)The innovation brought about a sea change in the market segment. (その革新的アイディアは市場に大きな変化をもたらした)

2. 【get wind of】嗅ぎつける
例)The police got wind of the criminal's whereabouts. (警察は犯人の居場所に関する裏情報を入手した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

今回の2つの表現は、「海のような大きな変化」→「大転換」、「~の風を感じる」→「嗅ぎつける」と、ともに何となく意味が想像できますね。



翻訳の研究をしている友人の話によると、1909年に日高柿軒(しけん)が翻訳した『フランダースの犬』では、「ネロとパトラッシュ」が何と「清(きよし)と斑(ぶち)」になっているそうです。他にも1911 年の『青い鳥』では「チルチルとミチル」が「近雄と美知子」に、1925 年の山本憲美(のりよし)が翻訳した『楓物語』(『アルプスの少女ハイジ』のこと)では「ハイジ、ペーター、クララ」が「楓、弁太、久良子」になっているそうです(最後の2作品の名前は当て字のようですね)。

このように翻訳作品の登場人物の名前を通時的(歴史的)に眺めていくのは非常に興味深く、友人の今後の研究を楽しみにしています。それにしても、現代の感覚からすると、パトラッシュがブチだとピンと来ませんが。。笑。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.154」を改稿)

2015年6月6日土曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【9】

1. 【cafe-goer】カフェによく行く人
例)I'm a cafe-goer. (僕はカフェ好きだ)

2. 【incognito】身分を隠して
例)The president visited the country incognito. (大統領はお忍びでその国を訪れた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

最初のgoerは便利な言葉です。museum-goer(美術館好き)、sea-goers(海好き)、bar-goer  (バーの常連)、movie-goer(映画好き)など、無限に単語を作り出すことができます。


橋本治さんの手による『桃尻語訳 枕草子』(1987年、河出書房)を再読しました。これは『枕草子』の現代語訳なのですが、本人が「まえがき」で述べているとおり、「過激な翻訳」です。

例えば有名な第一段は次のように訳されています。「春って曙よ! だんだん白くなってく山の上の空が少し明るくなって、紫っぽい雲が細くたなびいてんの!」(『桃尻語訳 枕草子(上)』p. 17)。 驚きの超訳ですね。

2015年の今、訳し直すとしたらこうなるでしょうか。「春の曙ってやばくね? 白くなってく山の上の空がちょっと明るくなって、紫っぽい雲が細くたなびいてね?」――お粗末さまでした。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.152」を改稿)

2015年6月5日金曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【8】

1. 【big wig】大物
例)The actor is a big wig. (あの俳優は大物だ)

2. 【push the envelope】限界に挑む
例)I pushed the envelope to achieve the goal. (目標達成に向けて120%の力を発揮した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

ちなみに最初のbig wigですが、直訳は「大きなカツラ」。イギリスでは昔、裁判官などの要職についていた方たちが大きなカツラをかぶっていたことから、このような意味になったそうです。


翻訳につまったとき、打開策の1つとしてお風呂に入ることにしています。真偽のほどは定かではありませんが、水は思考を流動化すると聞いたためです。実際、水のお陰か、はたまた場所を変えて気分転換できたためかは分かりませんが、いい訳が浮かんだこともあります。皆さんもよかったらお試しあれ。(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.150」を改稿)

2015年6月4日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【7】

1. 【facelift】変革
例)The CEO gave his company a facelift. (CEOは自社変革に取り組んだ)

2. 【flying start】好調な滑り出し
例)The tennis player got off to a flying start by winning first four games in a row in the first set. (そのテニス選手は第1セットでいきなり4ゲーム連取し、好調なスタートを切った)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。
 

今回取り上げたfaceliftは、ご存じのように、もともとは美容整形の意味。そこから意味が派生して、「変革」という意味が生まれたと考えられます。

またflying startは、日本語でも「フライング」と言うように、「不正スタート」を意味しますが、「好調な滑り出し」というよい意味にもなるんですよね。こうだからこそ、ボクの言語への興味は尽きないのです。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.148」を改稿)

2015年6月2日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【6】

1. 【sport】(動詞で)見せびらかす
例)He sported me around his house. (彼は僕に自宅をみせびらかした)

2. 【white elephant】厄介な物
例)The ornament is a white elephant. (あの装飾品は無用の長物だ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。

ちなみにwhite elephantの語源についてはアルクのウェブサイト(http://www.alc.co.jp/)にこうありました。「【語源】昔のタイでは、ホワイト・エレファント(白い象)は珍しいので神聖な動物と見なされており、それを捕まえると王様に献上され、王様だけがそれに乗ることができた。ところが、エサ代が高くつくという問題があった。そこで王様は、気に入らない家来にホワイト・エレファントを与えた。ところが、それを使うことも、乗ることも、処分することも許されず、ただエサ代がかさむばかりで破産に追い込まれた」。なるほど、ですね。
 


私はHarukinian(村上春樹さんのファン)です。村上さんの作品は世界各国で翻訳されていますが、村上さんについて、鋭い時代の読みを常にみせ続ける文芸評論家 兼 大学教授の加藤典洋さんは「もう村上は、世界のMURAKAMIになってしまった。『NORWEGIAN WOOD』と『ノルウェイの森』は同じ作品ではない。もはや、『ノルウェイの森』が本物で、英訳はその写し絵だというのではない。」(朝日新聞、2006年4月25日)と喝破しています。

つまり翻訳作品が別個のオリジナルの作品になってしまったということですね。グローバルな時代にはこういう面白い逆転現象が起きるようです。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.146」を改稿)

2015年5月29日金曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【5】

1. 【reel off】連続で得点をあげる
例)She reeled off six points in the final set. (彼女はファイナルセットで6ポイント連取した)

2. 【steer clear of~】~を避ける
例)You should steer clear of that suspicious restaurant. (あの怪しげなレストランには行かない方がいいよ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。




敬愛する翻訳家の宮脇孝雄さんによる『翻訳家の書斎-<想像力>が働く仕事場』を拝読しました。宮脇さんはインターネットが普及する前、旅行ガイドブック、地図、通販カタログからダイレクトメールまで、あらゆるものを集めることで情報収集しながら翻訳をしていらっしゃったそうです。

翻訳者も通訳者も情報が命。ボクも宮脇さんを見習って、体が情報でできていると感じるくらいまで日頃からせっせと情報を幅広く集めていきたいと思っています。
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.144」を改稿)

2015年5月28日木曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【4】

1. 【lead the pack】群を抜く
例)He leads the pack in tennis. (彼はテニスの腕にかけては並外れている)

2. 【a thorn in one's side】~の悩みの種
例)One of my colleagues has been a thorn in my side. (同僚の1人が頭痛の種だ)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。




1999年に学術誌『言語』上で連載となっていた、フェミニストで社会学者の上野千鶴子さんによる「女ことば男ことば」の第1回「女ことばの近代」で、上野さんが“I am not convinced”の訳を「ワタシは説得されないわ」とするか、それとも「ぼかぁフに落ちないね」と訳すべきか、という話をされていました。これはすべて文脈次第、と言う事が出来ます。言い換えれば、通翻訳者には文脈を読む力the ability to read between the linesが求められる、ということになりますが、それこそが通翻訳者の腕の見せ所、「通翻訳の愉楽」かも知れません。

あなたは“How are you?”どのように訳しますか?
「お元気ですか?」、「調子どぅよ」、それとも「ご機嫌いかが」?
(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.142」を改稿)

2015年5月27日水曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【3】

1. 【old faces】なじみの顔
例)I saw some old faces at the party. (パーティ会場でなじみの顔をみかけた)

2. 【come on the heels of~】~に続いて起きる
例)The aftershock came on the heels of the earthquake. (本震の後、余震があった)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。




最近、other mindを他我、alternationを翻身、translationを訳業、など、相次いで卓抜な訳語に出会いました。日本文学者の小森陽一さんは『翻訳という実践の政治性』(東京大学出版会)という本の中で「翻訳は苛酷であると同時に快楽でもある」と言っていますが、その「快楽」とはこういう美しい翻訳ができたときに得られるものなのかも知れません。

そのためには、英語ができるだけでなく、きちんとした日本語もできる必要があります。みなさん、日本語も得意ですか?

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.141」を改稿)

2015年5月26日火曜日

現役通訳者によるお役立ち英語表現【2】


1. 【under one's belt】手中に収めて
例)I have seven trophies under my belt. (私は7度の優勝を手中に収めている)

2. 【go for broke】一か八かやってみる 
例)I went for broke and it worked out. (一か八かやった結果、それが奏功した)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。


高校時代の英語の先生は、口をすっぱくして「Good morningの訳は『よい朝』ではありません。文脈に合った訳をしなさい!」と繰り返していました。

また先生は、“if”(もし~ならば)を使って、「(電話に出たときに発する)『もしもしhello』は『イフイフif-if』ではありません!」ともジョーク交じりに話していました。上記のようなイディオムも一緒、直訳ではだめなのです。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.138, 140」を改稿)

現役通訳者によるお役立ち英語表現【1】

1. 【household name】有名人
例)He's become a household name. (彼はお茶の間の有名人となった)

2. 【go the full distance】最後までやり抜く 
例)I went the full distance and achieved the goal. (最後までやり抜いた結果、目標を達成できた)

今日は上の2つを取り上げました。機会があれば使ってみて、自分のものにしてみましょう。




イディオム、特に口語のイディオムは苦労するものの1つです。常に意味が広がっていくイディオムに着いて行くには、日ごろから新聞・雑誌など「目先のものを追った」メディアを使いながら地道に情報収集を続けていくしかありません。

イディオムの理解には勘も必要となってきます。日ごろよりその言語が話されている文化(英語だったらアメリカやイギリスなど)についての知識を映画・雑誌などで仕入れておくことが勘を養うのに役立ちます。

(まぐまぐメルマガ「英語で身を立てる方法 vol.138, 140」を改稿)

現役通訳者が書評をしたら【24】『日本語で読むということ』


私は日英通訳者だが、日英通訳者は日本語と英語のはざまに生きる存在。だからこそ水村美苗の『日本語で読むということ』(2009年、筑摩書房)が書店で目に入った。

「あとがき」によると、著者がもともと想定していたタイトルは『日本語で読む・日本語で書く』。そのための「巻頭エッセイ」を書いていたが、想定外に量が増えた結果、そのエッセイは論争を呼んだベスト・セラーであり、英訳もされている『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』(英訳タイトル:The Fall of Language in the Age of English[2015, Columbia University Press])として日の目をみた。一方、『日本語で読む・日本語で書く』は『日本語で読むということ』と『日本語で書くということ』に二分割されることになった。今回取り上げる本はこうして生まれたのである。

エッセイ・評論集である本書は、青春期をアメリカで過ごさざるを得なかった人間が獲得した、2つの文化で挟まれる中で生成された視点から眺めた日本語・日本文化・日本文学をめぐる一冊となっている。

たとえば水村は日本文化についてこう言う。

旧いものが消え、新しいものが生まれ、時のながれに文化が変容していくのはあたりまえである。だがあまりに多くのかけがえのない〈形〉を、ここまで平気で壊してきた日本が私にはひたすら悲しい。ただその日本にも、日本を「発見」し、日本の〈形〉をひきつぐことにお金にもならないのに一生をかけている人たちがいる。日本に永住の地を求めてもどってきたこの私を慰めてくれるのは、ほかならぬ、そのような人たちの存在である。(148-149頁/「日本の『発見』」[147-149頁、初出:1994年])。

ボクも日米のはざまで生きる(そしてそれは必ずしも心地いいものとは限らない)存在であり、水村の気持ちがよくわかる。西欧社会は資本主義的であり、したがって破壊的な部分が取り沙汰されがちであるが、とみに建物に関しては古いものをできる限り保存し、それを改築しながら使用していく文化である。いったんそのような文化に触れると、日本が如何にスクラップ&ビルドの国であるかを思い知らされる。少なくとも住宅に関しては。

またアメリカは孤独の国でもある。行き過ぎた個人主義の結果、また自由を尊重するがゆえの政府不介入の原則(=夜警国家、レッセフェール)により、国民はバラバラなfragmented存在となった。だからこそ公共交通機関は発達しないし、国民皆保険もオバマケアを待たねばならなかったのである。

アメリカに憧れていた若いころ、思いがつのって桐島洋子『淋しいアメリカ人』を耽読していたが、実際にアメリカに来てみると、本当にアメリカ人は孤独で淋しい存在であると実感する(だからこそ逆説的に家族を大切にするようになる)。

水村もそれを認識している。水村は『私小説from left to right』を執筆したきっかけに触れながら、

「あのしんしんと雪の降る夜の孤独―[中略]アメリカという国そのものの孤独」
191頁/「灼熱のインドと雪夜のアメリカ」[189-191頁、初出:1995年])

とアメリカを描写する。水村にとって、日本を考えることは、翻ってアメリカを考えることでもあった。彼女にとって両文化は車輪の両輪であり、コインの両面であり、かつ合わせ鏡の中にいるように、1つの文化を眺めることは、もう1つの文化を眺めることでもある。

そんな水村は、『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』でよりはっきり述べたように、世界が英語で覆い尽くされてしまうのではないか、という危惧を抱いている。だからこそ日本語を保存しなければ絶滅してしまうのではないか、という危機感を強める。

英語の世紀に入った今、英語の世紀が続く今、私たちの日本語は、[中略]そこへと帰っていきたいと思わせる言葉であり続けられるか。そこに自分の精神の跡を刻みつけたいと思わせる言葉、その土壌こそを豊潤なものにしたいと思わせる言葉であり続けられるか。
この問いを問わねばならないのは、今、すべての日英語圏の人間の宿命なのである。(235頁)

少し強迫神経症的にも聞こえるメッセージに「歴史をみれば時代の変化はゆるやかであり、したがって慌てる必要はない」と思う人たちがいるかも知れない。でも時代の流れを敏感に感じとるのは、作家や詩人のような鋭敏な感覚の持ち主であることを、これまた歴史は教える。ボクは社会科学で博士号を取得したが、「言うまでもなく、社会科学者の直観よりは、文学者の直観の方がずっと先を行っている」(上野千鶴子『女という快楽』〔新装版〕、2006年、勁草書房、p. 17)のである。

2015年3月16日月曜日

現役通訳者が書評をしたら【23】『ハーバード白熱日本史教室』



北川智子さんの『ハーバード白熱日本史教室』(2012年、新潮社)を読んだ。日本では一時、ハーバード大学マイケル・サンデル教授による「ハーバード白熱教室」(NHK)が話題になったが、タイトルはそのパロディといってよい。

「パロディ」「二匹目の泥鰌」というと聞こえが悪いが、読み始めるとページを繰る手が止まらない。

印象派歴史学(鳥瞰的に歴史を見る歴史学の一派)に属する北川さん。彼女の代名詞といっていいコンセプト“Lady Samurai”は、一言で言えば「戦わずに、かつ陰で大いに活躍する女性たち」(p. 71)であり、「殺されない性」(p. 73)。従来の歴史学ではこのような女性たちは男性に依存する存在として描かれてきた。しかし実は、われわれが思う以上に広範な影響力を持ち、女性らしさよりもサムライらしさを反映していた存在であった。

北川さんの学生さんたちがよく思い浮かべるLady Samuraiは、たとえば映画「キル・ビル」の主人公たち。しかし北川さんが想定するのはたとえば豊臣秀吉の妻ねい(通称ねね)であり、ねねの周辺にいた女性たち。彼女たちの書簡などを読み直すと、彼女たちが確固たる存在理由のあった人物であることが浮かび上がってくるのだ。英語では"Lady Murasaki"となる紫式部も、Ladyの単語が共通していることから類推できるように"Lady Samurai"の1人である。
 
なお、北川さんの定義を逆立ちさせれば、男性=サムライは表舞台には立てたが、「殺される性」でもあったことになる。 私は「殺される性」に属するのだ・・・。

彼女の研究目的は「武士道を批判するのではなく、まずは武士道の陰に隠れてきた武士階級の女性にスポットライトを当て」(p. 60)ることであり、「その上で、彼女たちの生き方と死の意味を考え」(p. 60)るもの。最終的には「フェミニストのように男女同権的な立場をとるのではなく、どのようにサムライとLady Samuraiが日本の歴史をつくっていったのか、サムライで完結した日本史を超える日本史概論、専門用語でいうと『大きな物語(grand narrative)』を描き出すこと」(p. 60)を目指す。

ここで気になるのが北川さんのフェミニズム観である。私は少なからずフェミニズムを勉強したが、すべてのフェミニストがあらゆる側面で男女同権を目指しているわけではない。また北川さんは
「『Lady Samurai』のクラスは、女性が史実にどう現れたのか、まずはジェンダー研究の手法で女性に関する史料を読むことから始め、そこから見えてくる新しい要素をあつめて物語にしたものです」(p. 90)と述べるが、ジェンダーに敏感でフェミニズムには鈍感な人、というのは矛盾語法のように聞こえる。ここから北川さんのやや浅薄なフェミニズム理解と、自分は世間で言われるような「フェミニスト」ではない、と線引きする様子が垣間見れる。


名門プリンストン大学の博士課程を3年という短期間で修了し、現在はハーバード大学で教鞭をとる北川さんは、傍から眺めると順風満帆な人生を送っているようにみえる。しかし北川さんはハーバードで5つのハンデを抱えていると言う。その5つとは、(1)女性であること、(2)若いこと、(3)アジア人であること、(4)英語が母国語ではないこと、(5)終身在職権(tenure)がないこと。しかし北川さんは柔軟な思考でそれらをうまく逆手に取り、反転させる戦略で乗り越え、これまで「ベスト・ドレッサー賞」のみならず「思い出に残る教授賞」まで授与されている。

異国の地でガイジンとして前進を続ける北川さん。同じ立場にある者として、さらなる飛躍を願わずにはいられない。